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梅乃宿のパイオニアたち

酒を造るということは、日本の文化を継承するということ。 酒文化の伝道する梅乃宿のポリシーをご紹介します。

SEASON 04

梅乃宿ストーリー

第9回 【若き清酒の作り手たち】新しい酒文化の創造に挑戦し続ける

梅乃宿は杜氏(とうじ)による酒造りを廃止し、2017年から社員自らによる清酒造りをスタートさせました。「新しい酒文化を創造する蔵」として、挑戦の歩を進める梅乃宿の日本酒造りへの思いを、2013年に社長に就任した代表取締役の吉田さんに聞きました。

代表取締役:吉田 佳代

 

———昔の酒造りが今の酒造りと大きく違う点は何だと思われますか?

梅乃宿の長子として生まれた私は、昔から蔵の様子をよく見聞きしてきました。そうして実感してきたのが、働き方の変化です。

日本酒には、汗水を流し、大変な思いをして造った方がおいしいというイメージがあるようです。実際「酒造り」と聞いて多くの方は、杜氏の指示の下、蔵人たちが時には夜を徹して仕事をする現場を想像されるのではないかと思います。

確かにかつての日本酒蔵では、杜氏が自らの地元から、蔵人はもちろん炊事・洗濯などを担当するまかない担当までを率いて蔵にやってきて、11月頃から酒造りが終わるまでの約半年強を過ごすというのが通例でした。もちろん梅乃宿も冬になるとそうした杜氏と蔵人集団を迎え、時に麹室で真夜中に作業を行うといった酒造りが毎冬、行われていました。

その当時の杜氏や蔵人の働き方はいわゆる出稼ぎの形態です。彼らは1年の半分以上を地元・家族と離れて過すことを余儀なくされていました。

しかし時代が流れ、長く地元を離れる出稼ぎ型の蔵人のなり手は減少していきます。そこで梅乃宿では20年ほど前から、蔵のある奈良で若手を募り、彼らを杜氏が取りまとめる形での酒造りを始めました。

———時代と共に、蔵人の働き方に変化が必要になっていったんですね。

杜氏に同行する蔵人が酒造りのために自らの地元を離れる必要はなくなったものの、酒造りの仕事が冬季に偏り、時に深夜に及ぶなど不規則という課題は残っていました。

日々の業務時間や休日が定まらないままでは、先々家庭を持っていく若手の蔵人たちが仕事への意欲を持ちづらいはず…。梅乃宿が今後10年先、20年先、50年先とおいしい酒を醸し続けていくには、蔵人の働き方をさらに改善していかなければならない、ということを強く意識するようになっていきました。

———そうした流れが、杜氏制度の廃止にも結びついていったのでしょうか?

蔵人の働き方に改革が必要だと感じていたことに加え、蔵人として働く若い世代のものの見方や考え方にも変化を感じていました。

一般的に現代の若い世代は、カンやコツに頼るのではなく、数値やデータをもとにしたものの見方、論理的な発想を得意とします。その点、前杜氏が、杜氏のこだわりと同時に酒造りのデータ化などにも積極的に取り組む方だったことは、若い蔵人にとって幸いだったと思います。

また梅乃宿では、知識や経験を深めてもらうために研修や勉強会への参加を推奨していて、学んだ知見を試してみたいという蔵人の意欲の高まりも感じるようになっていました。

一方、杜氏には本来、お酒の味に集中してもらうのが最善です。しかし情報発信の多様化と自社の酒造りを広く伝えることを求められるようになってきたことにより、杜氏にある意味広報担当として発信力も担ってもらう必要性が出てきていました。そういった酒造り以外の仕事は、杜氏には負担になっているとも感じていました。

社長である自分の使命は、今までの酒造りの伝統と今後ますます多様化していく労働環境を考慮し、誰もが気持ち良く、モチベーション高く働ける環境を作ることです。その思いから杜氏のもとで蔵人が動く杜氏制度を廃止し、誰もが自分で考え提案していける、社員による酒造りに踏み切りました。

それまでの蔵人は、伝統の酒造りに合わせた特有の就業体制でしたが、現在は蔵人も他の社員と同様、定時の出退勤や休日取得を実現しています。

もちろん、「新しい酒文化を創造する蔵」を掲げる蔵としては、今の状態が完成形だとは思っていません。常にあゆみ続け、変化・進化していくことが大事だと考えています。

———酒造り改革であり、働き方改革でもあったわけですね。

私はカリスマ経営者ではなく、社内から上がってきた提案や外から得た情報を検討し、バランスを考えて決断していくタイプ。一方で、今は蔵元が杜氏を兼ねている蔵も多く、いくつもの蔵が酒造りの工程を見直し、常識とされたやり方とは異なる造り方に挑戦していらっしゃいます。他の蔵がどういう造りをされているのか、実際やってどうだったか、蔵元の本音や生きた情報を聞き出して蔵にフィードバックするのは私の仕事の1つです。

その点では、社内外問わず誰にでも遠慮なくいろいろ聞ける性格が幸いしていますね。

———社員による酒造りを開始して2年。真価が問われていく時期ですね?

杜氏による酒造りから、製造部長の桝永・日本酒製造課長の上田・企画開発部課長の播野の3人体制による酒造りに変え、さまざまな新しい造りに挑戦し一定の評価はいただいてきました。

この間の経験を踏まえ、2020年4月に商品ラインナップの大幅な見直しを予定しています。合わせて価格も、品質に見合いどなたもが納得できるものへと見直します。「文句なくおいしい。だから梅乃宿のお酒を買う」と多くのお客さまに評価され、やりがいが蔵に広がるとうれしいですね。

———新蔵移転を2022年に控え、今後への思いは?

新蔵では、製造現場の動線が格段に良くなります。今よりさらにこだわりと、スマートさのバランスを考えながら、おいしいお酒ができる蔵を目指しています。

そして、私が梅乃宿の一番の自慢だと思っている人材、彼らが働いている姿をお客さまに見ていただき、お客さまに近い蔵として、お客さまにも、社員にも、一層喜んでいただけるような蔵にしていきたいですね。一朝一夕にはいきませんが、高みを目指して着実に進んでいきたいです。